イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
この男は……。

 握った拳がブルブルと震える。

 馬子にも衣装だあ?

 ふざけんな!

 何かあの憎たらしい顔にぶつけてやりたい。

 あー、もう生卵どっかに落ちてないかなあ?

「膨れっ面で何考えてんの?」

「生卵がないかなって」

 私の言葉に瑠海がクスクスと笑い出す。

「それ見つけて投げるの?的は俺かな?さっきのは冗談だよ」

 瑠海が面白そうに笑いながら私の方に近づくと、身を屈めてそっと囁いた。

「キレイだよ」

 甘くて低いその声に、背筋がぞくりとしてパッと瑠海から離れた。

「その……耳元で言うの止めてくれません?耳がくすぐったくて」
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