イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
「何でここに?」

「アメリカ大使の代理で来ました。あなたは全く僕に気づかなかったようですが」

 木村さんがクスッと笑う。

 何でこんな時に出くわすのだろう。

 この状態じゃすぐに逃げられない。

「あの彼は忙しそうでしたね」

 木村さんが私の前に屈んで足にそっと触れる。

「あの……大丈夫ですから。ハンカチが汚れますよ。気にしないでください」

 お願いだから早くどっかに行って欲しい。

 こんな無様な姿、見られたくない。

「痛くて歩けないんでしょう?お兄さんに休める部屋がないか聞いてきますから、ちょっと待ってて下さいね」

「いえ、本当に大丈夫ですから……」

 ああ、もうひとりで何とかするから空気読んでよ!

 半ばキレそうになっていると、タイミングよく瑠海が現れた。
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