イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
「それで?」

「俺にとっては婚約指輪を女性に贈るのと同じくらい……いや、それ以上の意味を持つんですよ。他の男には桃華は譲れません。あなたをはめようとした木村って男にもね。そんな男と桃華をくっつけようとするなんて、何を考えてるんですか?」

「あの事を知ってるんだな。俺は木村を気に入ってる。潰すには惜しい男だ」

「桃華を利用されるとは思わないんですか?」

「あれの前ではどんな男も毒気を抜かれる。君だってそうだろう?」

「ええ、妹さんはとても魅力的です。でも、桃華の意思を無視するのはよくないですよ。そろそろ失礼します。姫を救出に行かないと機嫌が悪くなりそうだ」

 足を引きずって大広間を出て行く桃華が見えた。

 慣れない靴を履いて靴擦れになったのかもしれない。

 ドレスを着るのも嫌がってたし、もう彼女も限界だろう。

 そろそろ帰るか。

「……ちゃんとあれを見てるんだな?」
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