イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 桃華の兄が意外だと言わんばかりの目で俺を見る。

 今まで女なんてただの道具くらいにしか思ってなかったし、信用ないのは当然か。

「何なら、後でメールで今日桃華がここで何を食べたかご報告しましょうか?目は離しませんよ。あなたの大事な後輩が桃華を追って行ったようだし、今度は本当に失礼します」

 軽くお辞儀をして桃華を追おうとすると、桃華の兄がフッと微笑した。

「本当に隙のない男だな」

「それはお互い様でしょう」

「だが、覚えておくといい。桃華は籠の鳥にはならない」

 笑みを返してそのまま別れたが、今思えばあれは俺を足止めしていたのかもしれない。

 策士だな。

 もし、あのまま話を続けていたなら、木村に桃華をさらわれていたかもしれない。

 桃華も動ける状態じゃなかったし。
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