イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
「何が新雪だ。ずぼずぼはまって前に進めないじゃない!」

 この状態で、下山までどのくらいかかるだろう。

 リフトで二十分以上かかったならかなり遠いし。

 1時間じゃ着かないよね。

 こんなお荷物でしかないスキー板あげるから、誰かかんじき持ってきてくれないだろうか?

 昔の人は偉大だ。

「ああ、かんじきどっかに落ちてないかな」

 非現実的な事を考えながらしばし現実逃避する。

 本当なら瑠海達がスキーしてる間に、土産物屋見て回ってたのに……。

 そうだ、スマホは繋がらないだろうか?

 ポケットからスマホを取り出して瑠海にかけるが繋がらない。

「やっぱり無理か」

ガクッと肩を落とす私。

 仕方なくまた一歩一歩歩き出す。

 十分ぐらい歩くと、視界が悪くなってきた。

 山の天気は変わりやすい。
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