イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 ここで、誰かが助けに来るのを待つしかない。

 まずは雪よけだ。

 自分の周りの雪を踏み潰して固めて、真ん中をひたすら掘る。

 小さなかまくら。

 救助に来る人がわかるようにスキー板を立てた。

「少しは役に立ちなさいよ!」

 バチンとスキー板を叩くと、かまくらの中に入る。

「小さいけど、雪が中に入らないだけましか」

 身体を動かしたらお腹空いた。

 そういえば、ポケットにチョコバー入れたっけ。

 ポケットから取り出して、手袋をとって封を開ける。

「ひょっとしたら最後の晩餐かな」

 ぱくりっと一噛みすると、なんだか涙が出てきた。

 ひとりってこんなに心細いなんて。

「瑠海でもいいから一緒にいたら心強いのに……」

 いや、待て待て。
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