イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 手がかじかんでこれ以上打つのは無理だ。

 ダメもとで送信ボタンを押すが、やっぱりメールは瑠海には送れない。

「遺言になっちゃうかな?」

 フフっと笑いが込み上げる。

 こんな状況でも笑えるんだから、今の私は正常な状態じゃない。

 身体が冷たい。

 感覚がだんだんなくなっていく。

 凍るってこういう感じなのかな?

 瑠海は私がいないことに気がついただろうか?

 でも……こんなに吹雪いてちゃ、捜索隊だって出ないよね?

「このまま死ぬのかな」

 ポツリと呟くが返事はない。

 誰もいないのだから当然だが、誰かに否定して欲しかった。
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