イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 遭難しかけたのに呑気だな。

 桃華の頬をブニッと軽くつまむと、彼女の口がごにょごにょ動いた。

「瑠海、カニもっとくだじゃい……むにゃ……」

 桃華がふふふっと笑う。

そんな彼女を見て唖然とする俺。

 彼女はある意味大物かもしれない。

 寝言が食べ物なんてお腹が空いてるんだな。

 俺の名前を寝言で呟いてくれたことを光栄に思うべきだろうか?

 他の男の名前なんて呟いたらそいつは瞬殺だけど。

「ずいぶん美味しそうな夢見てるね。こっちは気が気じゃなかったのに」

 思わずホッとして笑みが溢れる。

 見つけられなかったらどうしようかと思った。

 間に合わなかったらどうしようって何度も不安が過った。
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