イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
「無事で良かった」

 本当に……。

 眠っている桃華の身体をそっと抱き締める。

 彼女が目覚める気配はない。

 愛おしくてたまらない。

 他の奴には絶対譲れない。

 どんな邪魔が入ろうとも。

 まずは生還しなくては……意味がない。

 このままじっとしていればふたり共凍死してしまう。

 雪が止む気配はないし、セーラ達がいる山小屋まで移動は出来ないだろう。

 確かこの近くにスキー場の作業員用の山小屋があったはずだ。

 そこで雪が止むのを待つしかない。

「もうちょっと我慢して。ここより暖かいところへ行こう」

 桃華を肩に担いだままスキーでもう少し山を下る。

 山小屋に着くと、中に入ってまずは桃華のウェアを脱がして近くにあったソファーに横たえ、そこにあった毛布をかけた。
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