イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 プチッと電話を切る。

 今回の事はセーラだけのせいではない。

 俺も桃華に事前にスキーの腕を確認しておくべきだった。

 彼女の兄に絞め殺されても文句は言えない。

 俺が桃華の兄ならそうしてる。

 言い訳はしない。

 あの男には通用しないだろう。

「一発ぐらいは殴られるかな」

 想像すると笑える。

 こんな事を考える余裕が今はある。

 少し前までは彼女の生死が気になって頭がおかしくなりそうだったのに。

 俺の事をこんなにはらはらさせた当の本人はまだ夢の中。

「か……かんじき。誰かかんじき……」

 桃華がまた寝言を言っている。

 かんじきって……日本の昔話に出てくる……。

「あのかんじき?」
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