イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 すると、数秒じっとふたりを見据えていた兄が口を開いた。

「妹を助けてくれた事に感謝する」

 兄の言葉にほっと肩を撫で下ろす。

 でも、急に兄は何か挑戦的な表情になり、瑠海を見据えた。

「君の妹はもう知っているが、さっきギスラン皇太子が交通事故で亡くなったそうだ。君も桃華もこれからいろいろ選択を迫られる事になるだろう」

 兄の言葉に一瞬瑠海の目の色が変わったが、すぐにいつもの余裕のある表情に戻り兄に対峙した。

「俺は決して迷いませんよ。何があってもね」

 なんか目に見えない火花が散ってるような気がする。

 この険悪な空気は何なの?

 でも、そんな事より……。

 ギスラン皇太子って確かルクエ公国のだよね?

 その皇太子が亡くなったって事は、次の皇太子が瑠海って事で……。

 自分の気持ちにはさっき気づいたばかりなのに、瑠海が益々遠い世界の人になってしまう。
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