イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
20、辛い別れ ー 桃華side
 泣きながら助けを呼び続けていると、誰かが私の肩を叩いた。

「大丈夫です。脈はあります。ですが、殿下は頭を打っていますから、揺らさない方がいいでしょう」

 落ち着いた声。

 振り返ると、そこにいたのは瑠海の部屋の前にいた背の高い護衛だった。

「殿下の護衛をしているレオン・コルベと申します。救急車がもうすぐ来ます。殿下と一緒に乗って下さい」

 私は彼の言葉にただ頷く。

 今は半狂乱状態で何も考えられない。

 でも、一分一秒がとても長く感じられた。

 お願い、早く来て、早く瑠海を助けて!

 何百回そう願っただろう。

 瑠海と一緒に救急車に乗って病院に着くと、瑠海は救急の処置室に運ばれた。
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