イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 それでも私が軽率な行動をとらなければ、瑠海が怪我することはなかった。

 城に戻ろうとしたら、廊下の向こう側からコツコツという靴音が響いてきてそれは私の前で止まった。

 顔を上げると、その靴音の主は大公だった。

 氷のように固い表情、私に向けられるその冷たい視線。

「あれを失うわけにはいかない。有能だし、国民にも人気がある。瑠海との仲を悪く言うわけではないが、君はここにいても辛いだけじゃないか。それがわからないほど君は頭の悪い女性ではないだろう?」

 大公の言葉に私は唇をぎゅっと噛み締める。

何も言い返せせなかった。

「君がここに留まれば、また同じ事は何度でも起きる。昔とは違うし身分違いとは言わない。だが、君はプライバシーのない生活に耐えられるか?」

「……自分の事は自分が一番よく知ってます」

苦い思いでそう伝える。
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