イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
「桃華、早かったわね。顔色悪いけど、大丈夫なの?」

「大丈夫。私が見てるから、セーラは休んでて」

「ひょっとして邪魔かしら?そういうことなら席外すわね」

 セーラがクスッと笑う。

「ありがとう」

 セーラが病室を出て行くと、私は瑠海のベッドの近くに置いてある椅子に腰を下ろした。

 血色のない寝顔。

 でも、内臓に損傷がなくて本当に良かった。

 瑠海の手をそっと握る。

 その手には鷹の紋章の入った指輪が光ってる。

 ルクエの皇太子である証の指輪。

 今の時代、王子さまは普通の女の子とだって結婚出来る。

 普通の女の子だってプリンセスになれる。

 誰もが憧れる華やかで夢のような世界。

 でも……でもね。

 やっぱり現実は甘くない。
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