イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
21、なくなった枷 ー 瑠海side
 桃華が悲しそうに声を殺して泣いていた。

 手に入れたばかりのシャーリーが駄目になった時よりももっと酷く……。

 かすかに耳に入ってくる彼女の泣き声。

 心に伝わってくるその悲しみ。

 胸が痛くなって、無意識に桃華の頬に触れた。

「何で……泣いてるの?」

 俺の問いに桃華が笑って答える。

「だ、大丈夫です。……目にゴミが入っただけ」

 夢か現かわからない状態。

 思考力もなく、俺はそのまま眠ってしまった。

 だが、はっきり目が覚めると、あれは現実だったんだと理解した。

 病室に桃華の姿はない。

 夢と思っていた彼女の告白。

 彼女からのキス。
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