イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
「……そうか」

 あの人が桃華に何か言っていないといいが。

 叔父は雪山の件もあって桃華をよく思っていないみたいだし。

「私みんなに知らせてくるわね。これ瑠海のスマホ」

 セーラは俺にスマホを渡し、病室を出て行った。

 携帯でメールをチェックしていると、レオンからメールが届いてた。

 どうやら無事に桃華と同じ飛行機に乗ったようだ。

 他のメールもチェックしていると思わぬ珍客が現れた。

「もう起きて大丈夫なのか?」

 病室に入ってきて俺の顔を見るなり、彼は開口一番にそう聞いてきた。

「ええ。情けない姿ですみません」

 まさか彼が俺に会いに来るとは思わなかった。

「いや、妹を守ってくれて本当に感謝している」

「いえ、彼女を巻き込んだのは俺ですから。礼には及びません」

 それは謙遜ではなく、俺の素直な気持ちだ。
< 263 / 311 >

この作品をシェア

pagetop