イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 きっと他にも心ない事を桃華に言ったに違いない。

 そういう人だ。

 この人が桃華に追い討ちをかけなければ、彼女は俺に黙ってルクエを出て行かなかったかもしれない。

「邪魔者を容赦なく排除するところは相変わらずですね」

 俺は叔父を冷めた目で見た。

「そうしてこの国を守ってきた」

「その代償に妻と子供を亡くしましたけどね」

 叔父の浮気が原因で叔母は鬱病になり、終いには自ら命を絶った。

 叔父は公務があることを理由にして叔母を見舞う事もなかった。

「何が言いたい?」 

 叔父が目を吊り上げる。

「僕はあなたのような生き方はしませんよ。僕は王位継承権を放棄します」
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