イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
「正気とは思えん。前代未聞だ!」

 怒りのあまり、叔父は近くにあったテーブルをバンっと叩いた。

 テーブルがガタガタと揺れる。

「あなたが望むなら、ルクエの政治的な顧問になっても良いですよ」

「誰が望むか!お前は追放だ!ルクエから一刻も早く出て行け!」

「ありがとうございます。これでやっと日本に戻れます」

 俺はにっこり笑って右手にはめている指輪を外すと、叔父が叩いたテーブルの上にそっと置いた。

 叔父は奪うようにその指輪を握り締め、憤慨しながら病室を出て行く。

 クスリと笑うと、自分の右手を眺めた。

 指輪をひとつ外しただけなのに、ずいぶん軽くなった気がする。
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