イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 地元のおじさんに自殺志願者と間違われて、休憩所に連れていかれそうになったけど。

 観光だって言ってもなかなか信じてもらえなくて困った。

『うちのお婆ちゃんみたいな事言わないでよ。聞いてるの、桃華?』

「うん、うん。聞いてるよ。でも、バッテリーもうすぐなくなるから切るね。あと、お腹の赤ちゃんにおくるみ送っといたから、今日あたり届くと思う。じゃあね」

 姉の言葉を適当に聞き流して一方的に電話を切ると、再び断崖絶壁から海を眺めた。

 会社は辞めた。

 退職届を総務に出しに行くと、総務の課長がお局になっていた。

 瑠海が言ってた魅力的なポストとはこの事か。

 浦島太郎になった気分だった。

 でも、なんか今は全てがどうでもいい。

 そう思う。
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