イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 でも、これでいいんだ。

 唇を噛み締めながら自分にそう納得させる。

 今頃、ルクエではクリスマスパーティが開かれていて、皇太子としての瑠海の公務が正式にスタートしているだろう。

 そのうち、彼は私の事なんか忘れて素敵なお妃さまを迎えるんだろうな。

 そう思うと胸が凄く苦しくなる。

 小さい頃からわかっていたはずだ。

 ガラスの靴なんか履いたら固くて歩けない。

 瑠海は本物の王子さまだ。

 私とは住む世界が違う。

 私にとっては絵本の中の世界と一緒。

 なぜ出会ってしまったのだろう。

 王子さまはずっとお城にいれば良かったのにね。

 どうして私の世界に入って来たの?

 瑠海と出会わなければ、私は一人でも十分幸せだった。

 きっとキャリアウーマン目指して頑張っていたと思う。
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