イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 風邪引いちゃったかな。

 ぶるぶる震えていると、何かが私を背後からそっと抱き締めた。

「え‼」

 驚いて硬直していると、顔らしきものが私の肩に乗って、甘い声で囁く。

「俺を置いて勝手に帰らないでよ」

 耳元ではっきり聞こえるその声。

「うそ……」

 だって、今日は瑠海にとってとても大事な日で……。

 これは都合のいい夢なのだろうか?

 だとしたら、神様は残酷です。

「嘘じゃない。何でイブに東尋坊にいるの?護衛につけたレオンが心配して5分毎に桃華の写真をメール添付で送って来たんだけど。桃華が飛び降りるんじゃないかってひやひやしたみたいだよ。でも、ここでもシャーリーを持っててくれて嬉しいよ」

「そ、そっちこそ、何でここにいるの?今日はルクエでクリスマスパーティのはずでしょう?皇太子がこんなとこにいていいんですか?」
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