イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 いずれにしても、会社離れてまで会いたくなかった。

 タイミング悪すぎ。

 横に兄がいなければきっと舌打ちしていたに違いない。

「あなたの黒髪にも合ってるし、身体がスリムだから綺麗なシルエットでとてもお似合いですよ」

 褒められているというのに、身体中の毛が総毛立つ。

 こいつに褒められると気持ち悪い。

 悪意しか感じない。

「お構いなく。黒が気にいりましたから、黒にします」

 キッと瑠海を睨み付けながら、兄に黒のコートを手渡す。

 私と瑠海のやり取りを面白そうに見ていた兄が、私の方をじっと見る。

「本当にこっちでいいんだな?」

「うん、ありがとう」

 兄が店員に包装を頼んでいる間、瑠海がさらに私にスッと近づき耳元で囁いた。

「君も男に貢がせる女か。精々逃げられないよう頑張れば?」

 人を蔑むような視線。
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