イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
『……気持ちが込もっていれば、飲んで頂けるんですか?』

「桃華次第だよ」

『わかりました。飲んで頂けるよう頑張ります』

「楽しみにしてる。日本でフランス語がわかる部下に会えるとは思わなかった。いろいろと手間が省けて助かるよ」

 褒めるとこは褒めないと。

 正直、英語でいちいち説明しなくていいのは助かる。

『え?』

 俺が珍しく礼を言うと、桃華は俺の言葉が信じられないのか聞き返した。

「よい週末を」

 二度は言わない。

これまでの経験から考えると、強気の発言が飛び出すのだが、彼女は無言。

 俺に礼を言われ、さぞかし戸惑っているだろう。

 桃華との通話を終わらせると、イーサンがニヤニヤしながら目の前に立っていた。

「ずいぶん楽しそうだな。今の電話、日本語だったし桃華ちゃんだったろ?」
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