イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 良い香りだ。

 どうやら今朝は自分で入れたらしい。

 カップを持って口に運ぶ。

 美味しい。

 ブラックで飲んでも豆と淹れ方がいいのか、味に甘味があってまろやか。

 俺の様子をじっと見守る桃華に向かって微笑む。

「美味しいよ。ありがとう」

 俺が礼を言うと、桃華はスケジュール帳を握り締めながら、小さくガッツポーズした。

 まるで子供みたいな反応だな。

 桃華は素直に表情に出るので、見ていて飽きない。

「今日のご予定ですが九時から役員会議、十三時キャトル社打合せ、十五時表参道のベーター新店舗視察……以上ですが、何かありますか?」

「十九時からイーサンと俺の歓迎会をやるそうだ。予定に入れておいて。詳細はイーサンの秘書に聞くといい」

「はい、わかりました」
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