イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
「いい、俺がもらってこよう」

 店の人にタオルをもらってくると、桃華とバッグは消えていた。

 イーサンにタオルを投げつけるように渡し、桃華を探す。

「帰ったか?それとも……」

 店のトイレに行くと、彼女の姿が見えた。

 水道で必死にバッグを洗っている。

 せっかくのバッグが水浸し。

 可哀想だが……あのバッグはもう使えないだろう。

 桃華の手は革を擦り過ぎたせいか、真っ赤になっている。

「桃華、残念だけど、そのバッグはもう駄目だ。クリーニングに出しても臭いは取れないだろうし、そんなに濡らしては革が駄目になる」

「……でも、私のシャーリーです。私のパートナーなんです。お昼ご飯だって、晩ご飯だって節約して、こつこつお金を貯めて買ったんです。あなたにはわからないでしょう?望めば何でも手に入るんだもの。あなたみたいなセレブに……私の気持ちなんかわかるわけがない!」

 桃華が顔を上げてキッと俺を睨みつける。
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