イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 悪いと思ったが彼女の頬を平手打ちした。

 パチンという音が響く。

 力を加減したつもりだが、思いの外大きな音が出た。

 桃華の髪が乱れて彼女の表情は見えないが、正気に戻ったのか大人しくなる。

「叩いてごめん。痛かったね」

少し身を屈めて謝るが、彼女はうつろな目で俺を見るだけ。

「桃華、タクシーを呼ぶから今日はもう帰った方がいい」

 俺が桃華の頬に手をやり優しく声をかけると、桃華は嗚咽をもらした。

 悲しみのあまりくずおれそうな彼女をそっと抱き寄せ胸を貸す。

「夢……だった……のに。私は……シャーリーに……嫌われてる」

 しゃくり上げながら言う桃華の目は真っ赤だった。

「そんな事はない。イーサンが悪いだけだ。桃華のせいじゃない」 
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