恋って甘い。

結局、教室に戻れたのは帰りの学活が終わってから。
生徒が部活に向かい始めたのを見計らって、ベランダを出た。

さすがにフラれたことをクラスの皆に悟られるのは嫌だったから、仕方なくベランダで一人でいた。


担任の佐久間が教室の整頓を終え、教室には誰も居なくなった。
きっともう、よっぽどのことがない限り人は来ないはず。
辺りをチロチロ見回しながら、教室にやっとこ戻れた。





「いーち、にー、さんし、ファイト!」

バドミントン部のランニングの声が校内にまで響いてくる。
あたしの親友である菜乃の声が一番よく聞こえる。
一人、帰りの用意をしながらそんなことを考えていた。

ぼけーっと口を開けて座っていると、

ガタンっ!

古びた扉が開いて、誰かが入ってきた。

「うわぁ!.....って、かなかよ。驚かせんな!」

「あっ、八重か。」
髪をボリボリかきむしりながら入ってきたのはかな。
たぶん、バスケ部の荷物のはいった、ここにあるエナメルを取りに来たのだろう。




かな、宮井 叶は、あたしのクラスメイト。
家もそこそこ近いくらいで何かと一緒にいることが多い。
二年前はあんなに可愛かったのに、今じゃただの口の悪いバカでしかない。
席も隣で、すぐ突っかかってきて喧嘩になる。
痴話喧嘩をただただ繰り返している。

「忘れ物ならロッカーの上だし。」


「そ…そうじゃねーし。」ん…なんで今言葉詰まったんだこいつ?
いつもより目が動いている。なんか焦ってる?



「あんさ…俺さっき海と話したんだよね」 

っ…
「…で、なんだってゆーのさ」
かななにいってんの?ヤバい…思い出してきた…

「まぁなんだ、海はただのハダグロだし、腹黒いし、ヘボいし!」
< 2 / 3 >

この作品をシェア

pagetop