Black World
「忘れた人間に、忘れられた人間の気持ちはわからないんだろうね」


独り言のように漏れた、私の言葉に来陽は眉を細める。


「ただ忘れただけなのか?それとも、思い出したくないのか?」


来陽の答えは、どっち?


出来ることなら、後者じゃなきゃ良い。


もし後者なら、哀しいよ。哀しい過ぎるよ。


「、、、絢瀬」


来陽が私を忘れた日から、初めて自分の名を呼ばれた。


嬉しいはずなのに、来陽の瞳を見ていたらわかる。


来陽は、私を思い出したわけじゃない。


ただ成瀬が口にした私の名を、繰り返しただけ。


そこに、意味なんてない。


バカだな、私。


一瞬、来陽が思い出してくれたんじゃないか?


そう、期待してしまった。

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