Black World
その日は寝坊し、急いでいた。


いつもと何ら変わらない、通学路。


だが、そこに見慣れない姿があった。


大きなバイクに寄りかかり、煙草を口にする男。


見るからに、不良。


面倒なことに巻き込まれないよう、俯きながら急ぎ足でその場を通り過ぎようとした。


なのに、その男は引き止めるように声を掛けて来た。


「お嬢さん」


その声色に、私は足を止めてしまった。


相手の顔を見るために、ゆっくりと顔を上げる。


やっぱり、アイツだ。


「あ。俺って、ついてるかも」


そう言い、男は笑って見せた。

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