Black World
「よく忘れるんですか?」


真っ直ぐに来陽へと視線を向ければ、来陽の瞳が揺れる。


来陽は私の様子を伺うように、ジッとこちらを見る。


__ガチャガチャッ__


玄関の方から、物音が聞こえてくる。


「来陽~、鍵開いてたよ?」


そう口にしながら、女がこちらへと姿を現す。


女は私に気付くと、驚いたように瞳を丸くする。


慣れたように、来陽の家を出入りできる女。


彼女、なのだろうか?


だとするなら、この気まずい空気も納得できる。


私は2人の空間に堪えられなくなり


「お邪魔しました」


逃げるように、その場を後にした。

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