Black World
「ありがと。送ってくれて」

「ない頭で、余計なことまで考えるな。彼のことで悩んだら、連絡して来い。相談くらい、乗ってやるから」


千歳の言葉に小さな笑みを浮かべ、私は頷く。


「行ってこい」

「行ってきます」


私は千歳と別れ、学校へと向かった。


来陽の病気で悩む必要も権利も、今の私にはない。


それに私が何をしても、来陽の病気が治るわけじゃない。


気が緩むと、悪いことばかり考えてしまう。


だから、その度に言い訳を並べた。


昨日と何ら変わらぬ日常なのに、何故か全く違う世界に感じた。


騒がしい校内、キャッキャッと楽しそうな生徒たち。


同じ制服を身に纏い、同じ時間を共有する。


この人たちと、私は何が違うの?

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