Black World
「何の薬か、気にならない?」

「別に」

「気にならないの?」


彼女はもう一度、同じことを口にする。


「気にする必要、私にありますか?」


今も来陽のことを気にしているくせに、彼女に弱みを見せたくなくて、そんなことを口にする。


「別れてもいないのに、忘れられるの?」

「忘れたのは、彼の方です」


彼女の言葉にムッとし、気付けばそんなことを口にしていた。


「来陽は忘れたくて、絢瀬さんのこと忘れたわけじゃない」


瞳を潤ませながら、彼女は口にする。


「全部、病気のせいなの。来陽は、何も悪くない」


私だって、来陽を責めいるわけじゃない。

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