絶対に逃げられない部屋
相変わらず、良太は自分の頭を思いっきり殴りつけているが、綾乃はそれをあわてて止めた。
「ちょっとちょっと。何やってんのよ」
「何って夢なんだから目覚めようとしてるんじゃん」
綾乃は一つため息をついて、子どもをあやすような声で言った。
「馬鹿ねぇ。せっかく何でも叶う夢のなかにいるのよ。遊ばないと損じゃない。ねぇ竜也」
そう言って綾乃は、僕に下心を含んだ悪そうな笑みを向けた。
綾乃の言うことはもっともだった。
夢であるかの判断は重要ではない。
今大事なのは。
僕らはキャンプ場よりも楽しい場所にいるという事実だった。