絶対に逃げられない部屋



良太は3人兄弟の長男だった。




三人の子どもを育てるため、良太の母親は必死になって働いた。




良太は苦労する母親の背中を見て育ち、中学校からアルバイトをして家計を助け、二人の妹の父親代わりになっていた。





今大学に通っているが、学費は奨学金とアルバイトの給料でまかなっている苦学生だ。



「俺さ、親父の記憶あんまりないんだよね。親父は仕事でなかなか帰ってこなかったし。でも、母さんからいっぱい親父の話聞かされて育ったんだ。かっこよかったとか、すごい人だったとか。あとお酒も強かったって。俺もさ、もうお酒飲めるようになったから。一度親父と飲んでみたかったんだよ」





良太は照れくさそうに頬をかいた。




そんな良太に僕と綾乃は言う。




「もし、良太のお父さんがここに来たらさ、僕や綾乃からも良太はしっかりやってるって伝えてやるよ」



「そうそう。しっかり者のお兄ちゃんやってるってね」




良太は顔を真っ赤にしながら、「ばっか、やめろよ。そういうのはずいだろ」とそっぽを向いた。



そんなこと言いながらも、少し嬉しそうだった。



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