絶対に逃げられない部屋
「実はうちの家って昔からお金持ちってわけじゃなかったの。昔は結構貧乏だったんだ」
知らなかった。普段から身なりにもお金をかけている今の綾乃を見ると、到底そんな時期があったとは思えなかった。
「それでね。お金ないから、いっつもおんなじ服着せられててね。
学校ではよくいじめられてた。服が欲しいとねだっても、お父さんもお母さんも我慢しなさいとしか言わないの。とってもつらかった」
綾乃はいつもお洒落に気をかけていた。
でもそれは実は子どもの頃にからわれたことのコンプレックスからきているのかもしれない。
「でもね、弟の勇気だけは私の味方でいてくれた。
服が買えないから、代わりにお花の髪飾りを作ってくれたり。泣いてるときは必死に私を笑わせようと、おどけたり。本当に優しい自慢の弟」
綾乃は弟の話をにこやかな表情で自慢げに話した。
「その弟くんは今どうしてるの?」
聞くやいなや、綾乃の表情は一転して暗くなった。
「それがわからないの・・・」