絶対に逃げられない部屋




両親を一度になくした美和。




悲しむ間もなく、今度は親戚同士の遺産争いに巻き込まれた。





美和が相続した遺産をむしりとるため。



周囲の大人たちはこぞって美和をだましては金は奪い続けた。





僕が出会った頃の美和は、すっかり人間不信に陥っていたのだ。





「美和ちゃん、私や良太に心を開いてくれるまで、だいぶ時間かかったもんね」




綾乃は思い出すように瞳を閉じて、ぽつりとつぶやいた。




「僕にも最初、まったく心開かなかったからなぁ、あいつ。今でもあいつが信用してるのは、僕と綾乃と良太の3人だけだ」




ずっと騙され続けてきたんだ。



むしろ僕ら3人だけでも信頼してくれたのは奇跡だと思う。







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