絶対に逃げられない部屋



彼女のほうを見ると、彼女は瞳をとじて僕をずっと待っていた。




ああ、彼女のこの仕草は僕は良く知っている。





彼女がキスを求める合図だ。





ああ、美和・・・。






僕も本当に君を愛してる。











僕はあらためて、今回起きた出来事をふりかえる。






美和と喧嘩して、美和が出て行って。





絶望していたら、良太と綾乃が僕のためにキャンプを企画してくれて。





キャンプに向かう途中、交通事故で意識を失ったかと思えば、あの何もない赤い部屋と青い部屋にいざなわれて。






記憶も失い、出口もなく途方にくれていたら、良太がトイレをよびだして。






そこからパーティが始まったかと思えば、今度は一番会いたい人について語り合って。





また現実で4人で遊ぼうぜって約束したかと思えば、僕だけが生き残って。






そしてまた・・・美和と一緒に暮らせる幸せを手にすることができた。








まったく。







不思議な映画を見てるような気分だ。









ハッピーエンドとは言えないけれど。















最後くらいは映画のハッピーエンドのように締めくくりたい。
















彼女の腰を抱き寄せて。











左手の点滴台を離して、彼女の背中に指を這わせる。
















少しずつ・・・少しずつ・・・・彼女のくちびるに顔を寄せて・・・。














そして・・・

















僕はこの物語を美しく終わらせるために・・・・・・。


















彼女を抱えて窓の外へと飛び降りた。






< 81 / 91 >

この作品をシェア

pagetop