絶対に逃げられない部屋
彼女のほうを見ると、彼女は瞳をとじて僕をずっと待っていた。
ああ、彼女のこの仕草は僕は良く知っている。
彼女がキスを求める合図だ。
ああ、美和・・・。
僕も本当に君を愛してる。
僕はあらためて、今回起きた出来事をふりかえる。
美和と喧嘩して、美和が出て行って。
絶望していたら、良太と綾乃が僕のためにキャンプを企画してくれて。
キャンプに向かう途中、交通事故で意識を失ったかと思えば、あの何もない赤い部屋と青い部屋にいざなわれて。
記憶も失い、出口もなく途方にくれていたら、良太がトイレをよびだして。
そこからパーティが始まったかと思えば、今度は一番会いたい人について語り合って。
また現実で4人で遊ぼうぜって約束したかと思えば、僕だけが生き残って。
そしてまた・・・美和と一緒に暮らせる幸せを手にすることができた。
まったく。
不思議な映画を見てるような気分だ。
ハッピーエンドとは言えないけれど。
最後くらいは映画のハッピーエンドのように締めくくりたい。
彼女の腰を抱き寄せて。
左手の点滴台を離して、彼女の背中に指を這わせる。
少しずつ・・・少しずつ・・・・彼女のくちびるに顔を寄せて・・・。
そして・・・
僕はこの物語を美しく終わらせるために・・・・・・。
彼女を抱えて窓の外へと飛び降りた。