絶対に逃げられない部屋



僕と美和が地面に衝突する寸前。




僕は彼女の顔をみた。





彼女に張り付いていた顔の絆創膏は風圧ではがされて、大きな青あざが姿をあらわした。



彼女が出て行った日に、僕が懐中電灯で殴りつけた箇所だった。




彼女は泣きながら、僕の胸の中で「どうして?! どうして?!」としきりに喚いていた。




飛び降りた理由がわからず、パニックを起こす彼女を見て、ついつい笑みがこぼれてしまう。





ははは・・・。どうしたんだよ、そんなに取り乱して。





せっかく”お前のために”一緒に飛び降りてやったのに。





バイトをクビになって、お金がなくて困ってるんだろ?





僕が事故で意識を失っている間、心配で生きた心地がしなかったんだろ?





大丈夫。





”人間”以外ならなんだって手に入り、





ずっと2人っきりでいられる場所。









僕は知っている。









        < END >
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