戀
卓也の話は入学したときから聞いていた。
中学のころから読者モデルをしていて他校の女子も彼を見にうちの学校に来るほどのイケメンだ、と。
どれほどのものか見てやろうと思って興味本位でクラスに行くと、そこには飛び抜けて存在感を放ってる男が一人だけいた。
さすがモデルしてるだけあるな、っていうのが卓也への第一印象。
それから何回か見かけるうちに目が合ってる気がする、と思うようになった。
でも単なる思い込みだったら恥ずかしいし、あたしにはそもそも恋愛相談をできるような女友達がいなかった。
別にドキドキするわけでもないし、連絡をとりたいと思ってたわけでもなかった。
だから特になんの関わりも持つことなく生きていくんだろうなーなんて呑気に考えていたのに。
高校1年生の夏の終わり、あたしと卓也は付き合うことになった。
たまたま帰るときに靴箱で一緒になった、ただそれだけ。
なのにそのときにいきなり告白されて。
入学した時からずっと好きだったなんて言われて有頂天になったあたしは、後先考えずに即答で付き合うことに同意した。
なんであたし?って思うことはあったけど、好きって言ってくれたんだからそれ以上追及しても何の意味も持たないだろうって勝手に決めつけた。