(仮)flower
「1週間前、オレと響多が繁華街で絡まれてケンカになったの・・・覚えてる?」
「ん?あぁ、あったな、そんな事。相手ボコボコで、響多が止まんなくてヤバかったってヤツな?」
「そうそう、それ。実はそれ、止めたのは女なんだ。」
「「「はっ?」」」
響多が殴り合で周りが見えなくなった時、止めるのはいつもオレ達中心メンバーの仕事。
でも、見境がなくなった響多はオレ達にまで攻撃して来るから、止めるのも苦労するんだ。
それを、女が止めたって?
「で、その女の名前は?分かりますか?」
「いや、分からない。ただ、容姿だけは特徴的だったよ。赤毛の真っ直ぐなロングヘアーで、瞳はグレーだった。・・・と、いっても、カラコンしてたらそれも確実じゃ無いんだけどさ・・・。」
ん〜・・・、髪もウイッグだったらお手上げなんだけどなぁ・・・。
「・・・耳の後ろの首筋に、ホクロがあった。あと、オニキスのピアス。」
それまで口を挟まなかった響多がポツリと言った。
ホクロとピアス・・・か。
「身長は160㎝位かな?モデル体型だったよ。あと、スッゴイ綺麗な子なんだけど・・・。」
「けど?何だよ。」
「うん、目が・・・ね、何の光も無い、『闇』って感じがしてさ、ちょっと印象的だったよ。」
闇色の目・・・か・・・。
オレは、1人の女を思い出していた。
あの日、アイツは確かに闇色の真っ黒い目をしていた。
・・・でも・・・。
オレは、自分の考えを打ち消した。
アイツの目は、今は闇色ではないから・・・。