双子壁
ロマンに急かされたドミートリィはスモール・バックヤードの中心に慌てて駆けて行く
中心には大きな石を円形状に並べ、真ん中の空いた空間には乱雑に食べ物が置かれている
その場所で石に腰をかけ、果物ナイフで林檎を切っている少年が一人
傍に群がる幼き少年・少女達に切った林檎を分け与えていた
「ヴァジム!」
ドミートリィがその名を呼ぶと、黄金色に輝く髪が風に揺れ、澄んだ碧色の瞳が静かに彼を視界に入れた
「ドミートリィ
帰ったのか」
「はい!
北の方へ進み、まだ使えそうな木材を持ってきました!」
「そうか、ご苦労様
もう直他の皆も集まるだろうから、夕飯まで休んでると良い」
あまりに優しいその微笑みは、場にそぐわない程彼は美しかった
それにまた笑顔で返したドミートリィは、深く頭を下げた
ヴァジム・オレゴヴィチ・アブドゥバリエフ
16歳
このスモール・バックヤードにて最高指揮を取るリーダーである
彼は生まれながらに持つ研ぎ澄まされた精神と、冷静に物事を判断する能力に長けていた
周囲はその能力にすがり、彼の後を付いて行こうと言う絶対の信頼故に行動をしていた
そして何時しか彼の周りには151人の信者が集い、このスモール・バックヤードで暮らしている