最低王子と恋の渦





情けないなぁ…私って。


そう落ち込んでいると、三鷹くんは一歩私に近寄ってきた。




「…田中さんってほんとにお人好し」


「ご、ごめんなさい…」


「……キツく言ってごめん。映画行こう」


「え……あ、うん」




三鷹くんは私の手を引き、昇降口まで歩き出した。



…やっぱり、三鷹くんは優しい。

私は何度この優しさに助けられたんだろう。




「あのね田中さん」


「…え?」




歩きながらそう言い出した三鷹くんを私は見上げる。


三鷹くんの背中はとても細い。

でも、なんだか頼もしい雰囲気が溢れてる。




「俺は誰に誘われようが田中さんとの約束はなしにしたりしないよ」




背中越しに聞こえたそんな言葉。


ぽかんと三鷹くんを見上げる。




「それは……先約だから…?」


「馬鹿」




大きな溜息と共に罵倒された。


え、違うの…?


だって、テスト終わった日にご飯誘ったら西垣さんとの約束があるって断ったし…。

まあでも結局来てくれたんだけど。




< 107 / 347 >

この作品をシェア

pagetop