最低王子と恋の渦
猫かぶりちゃん
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映画を見終わり、私達は暗くなった帰り道を二人で歩いていた。
「ホラー映画観た後だと夜道ちょっと怖いね」
と、私が言ってみせると三鷹くんはフッと鼻で笑ってきた。
「あんなのただビックリさせてるだけじゃん。怖かった?」
「まあね。私は割と怖かったよ」
「田中さんってビビリなんだ」
「三鷹くんが怖がらなさすぎなんです」
久しぶりにホラー映画観たし、私は楽しめたんだけどなぁ。
三鷹くんは楽しくなかったかな。
…自分から誘ってきたくせに。
「ていうか後ろのカップルがうるさくて不快だった」
「…ああ、いたね」
映画が始まると怖いシーンで毎回彼女の方がキャッて怖がっててうざかったのなんの。
三鷹くんもやっぱり気付いてたんだね…。
「もし田中さんが怖がって俺に助け求めてきたら俺、」
「絶対しないから安心して」
私は声を強めて三鷹くんの言葉を遮った。
どんな貶し言葉を投げ掛けられるのか分かったもんじゃない。
三鷹くんはそんな私を見てまたフッと鼻で笑う。
…それムカつくな。