最低王子と恋の渦
「はい」
なんの抵抗もなく私に飲みかけのお茶が入ったペットボトルを差し出す三鷹くん。
私はそのお茶と三鷹くんをゆっくり交互に見た。
…三鷹くんの優しさなのか、自分がただカフェオレ飲みたかっただけの自己満足行為なのか。
分かんないけど…、どっちにしろ私に選択肢なんてないのだ。
これ断ったらさすがに失礼だし…三鷹くんも傷つくよね…。
そう思った私は、ここはありがたくお茶を貰うことにした。
私が受け取ると、三鷹くんはニッコリ微笑んでまた食事を再開する。
「…で、美乃はどうするの?」
「っえ?」
早速貰ったお茶を飲もうとした矢先、菜々がごちそうさまを言った後そんなことを言い出した。
ていうかご飯食べるのほんと早いな。
「和久井くんよ和久井くん。ほんとにクリスマスにデートすんの?」
「えっ、デート!?…デート…なのかな?」
「そりゃあそうでしょ。理由あるにしてもデートに変わりはないね」
「…考えてみれば…確かに」
このままいくと、私はほんとに和久井くんとクリスマスイヴにデートすることになるのか。
…そもそも、奢ってもらうようなことじゃないのに奢ってもらうっていうのがなんか…やっぱり抵抗あるというか、申し訳ないんだよね。
ましてや和久井くんなんてほとんど話したことないのに二人っきりでいきなりデートとかもう気まず過ぎて。
「田中さん」
と、不意に三鷹くんが隣から私の名を呼んだ。
くるりと三鷹くんの方を振り向くと、彼は片肘を付いてこちらに顔を向けていた。
どうやらもうご飯は済ませたようで。
「…な、何?」
「もうすぐ気になってた海外映画が公開するんだよね。知ってる?アクションの」
「…え、ああ何回かCMで観たかも」
…??
じっとこちらに視線を向け続けてくる三鷹くんに私は明らかに動揺した。
な、何この視線。
なんで三鷹くんはこんなこと言ってきたの?
ていうかほんとに映画好きなのかな。
「…24日」
「……え?」
「一緒に映画観に行こう」
絵に描いたように私はポカンと三鷹くんを見つめた。