最低王子と恋の渦
――「…えっ!?予定入ったの?」
「ご、ごめんね…」
5組の教室のドアの所で私は和久井くんと話す。
12月24日は予定が入ったから、和久井くんとの約束を断ったのだ。
「…そ、そっか…。その予定って、男子と?」
「…うん、まあ…」
私がそう小さく頷くと、和久井くんはガーンとショックを受けたようだった。
「ま、まじかよぉ!田中さんの裏切り者~!」
わあっと悔しそうに嘆く和久井くん。
裏切り者て。
和久井くんは恋人とかそういうの気にしすぎだよ…。
「…ハッ、もしかして三鷹っ?」
「え、よ…よく分かったね」
「うわ三鷹かよぉ……なら仕方ないけどさ…」
だからなんっで仕方ないの!?
なんなの男子の中で三鷹くんって一体どんな存在なの!?
「…ほんとに田中さんは三鷹と付き合ってないの?」
恐る恐る聞いてきた和久井くんを見て、私はハァと大きく溜息をついた。
「全然付き合ってないよ。ただの友達でしかないもん」
「…そっかぁ」
「ほんとに何考えてるか分かんないよねあの人」
「まあなー、でもモテるのは羨ましいわー」
……そうですか。
和久井くんは普通の男子高校生で安心した。
「…じゃあしょうがないし、今度購買のやつなんでも奢ってあげるから、それでチャラにしてよ」
「い、いやいやほんとにもういいんだよ!気にしないで!」
「いーのいーの!じゃ、そういうことで!」
「ちょ、和久井くんっ」
またも彼は強引にそう決めてしまい、スタコラと教室の奥へ行ってしまった。
…ひ、人の話を聞かんか和久井め…。
まあ決められてしまったものはしょうがない。
奢りのレベルも前より下がったし、もういいや。
妥協するしかない。