最低王子と恋の渦







――「…えっ!?予定入ったの?」



「ご、ごめんね…」







5組の教室のドアの所で私は和久井くんと話す。



12月24日は予定が入ったから、和久井くんとの約束を断ったのだ。









「…そ、そっか…。その予定って、男子と?」




「…うん、まあ…」









私がそう小さく頷くと、和久井くんはガーンとショックを受けたようだった。










「ま、まじかよぉ!田中さんの裏切り者~!」










わあっと悔しそうに嘆く和久井くん。




裏切り者て。


和久井くんは恋人とかそういうの気にしすぎだよ…。










「…ハッ、もしかして三鷹っ?」




「え、よ…よく分かったね」




「うわ三鷹かよぉ……なら仕方ないけどさ…」










だからなんっで仕方ないの!?



なんなの男子の中で三鷹くんって一体どんな存在なの!?









「…ほんとに田中さんは三鷹と付き合ってないの?」








恐る恐る聞いてきた和久井くんを見て、私はハァと大きく溜息をついた。









「全然付き合ってないよ。ただの友達でしかないもん」




「…そっかぁ」




「ほんとに何考えてるか分かんないよねあの人」




「まあなー、でもモテるのは羨ましいわー」









……そうですか。



和久井くんは普通の男子高校生で安心した。











「…じゃあしょうがないし、今度購買のやつなんでも奢ってあげるから、それでチャラにしてよ」




「い、いやいやほんとにもういいんだよ!気にしないで!」




「いーのいーの!じゃ、そういうことで!」




「ちょ、和久井くんっ」










またも彼は強引にそう決めてしまい、スタコラと教室の奥へ行ってしまった。




…ひ、人の話を聞かんか和久井め…。






まあ決められてしまったものはしょうがない。


奢りのレベルも前より下がったし、もういいや。





妥協するしかない。







< 126 / 347 >

この作品をシェア

pagetop