最低王子と恋の渦







   *   *   *








…どうするか。







田中さんの家に着いたものの、夜中だし家の人寝てるだろうしインターホン押したら起こしてしまうしで俺は現在田中さん家の玄関先で立ちすくんでいる。




田中さん寝ちゃったから勝手に家は入れない。


ていうか鍵閉まってるし。








…田中さん起こすしかないかな。


あんまり起こしたくないけど。









「…田中さん」




「……すー…」











起きない。


ていうかやっぱ寝かせてあげたい。







ふと、俺は駄目元で扉をノックしてみた。



誰か起きてたら気付くだろうけど、もし誰も起きてなかったら…。




その時はもう諦めて田中さん起こそう。












――ガチャ。









…え。



ぎょっとして開いた扉から覗く人物を見た。










「…あ、三鷹さん?」




「ああ、優太くんか」









チェーンを掛けたまま扉を開けたのは田中さんの弟の優太くんだった。



俺だと気付いた優太くんは一度扉を閉めたあとチェーンを外してまた開いてくれた。









「…どうしたんですか?こんな夜中に」




「お姉さんが体調不良でダウンしてるから連れて帰って来たんだ」









俺がそう言うと、優太くんは俺の背中で寝てる田中さんを見て納得した表情を見せる。

とは言ってもいつもの無表情だけど。









「それはそれは…すみません」




「いいよ別に。じゃあ後は任せてもいいかな」




「…姉ちゃん起きるかもしれないし、部屋まで運んでくれませんか…?」




「…え?」









そして優太くんは「どうぞ」と言って俺を家の中に招き入れた。




…田中さん後で怒ったりしないかな。




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