最低王子と恋の渦
気付いた春
「えらく突然ですな」
食堂にて。
私は菜々に話していた。
今日はパンではなく唐揚げ定食にしてみる。
「…やっぱりそうかな?」
「私何回も言ったじゃん。三鷹くんとお似合いだと思うって。それ全部否定してきて急にこれ?」
「……いや、なんか自分の謎の感情を合わせてみたら…これ好きなんじゃないかなって思って」
「当たり前でしょ。でも自覚すんの案外早かったね」
「…そうなの?」
数か月前までは三鷹くんのこと苦手で、
ちょっとずつ三鷹くんの優しいところ知ってって、
クリスマスの時も初詣の時もそんなこと考えてすらなかったのに…。
「美乃それ佐々木くんの時も突然言い出したよね」
「…う」
夏休み入る直前に私は一年の時同じクラスだった佐々木くんに告白をした。
そもそも好きになったのは文化祭の準備をしていた時だった――
『あ』
完成間近だった看板を落として壊してしまった私。
やばい皆に冷たい目で見られる怒られる責められる。
どうしようもなくて泣きそうになってた時。
『…田中さんそれ…』
『…あっ』
私が看板を壊したことに気付いた佐々木くん。
バレてしまった。
もう駄目だ…。
と、責められる覚悟をして謝ろうとしたその時。
『あ、ごめん皆!田中さんにぶつかって看板壊れた!まじごめん!ごめんな田中さんっ』
大声でそう言う佐々木くんに皆は『おい馬鹿だろ佐々木ー』『仕方ねぇ皆で直すぞー』と笑いながら作業に取り掛かり始めた。
私がビックリしていると、佐々木くんはニコッと笑顔を見せてくれた――
つまり私のことを庇って自分が罪を背負う側になってくれた優しい佐々木に心を奪われたのです。
それはもう早かった。