最低王子と恋の渦
「田中さんは軽いしね」
「…え、性格が?」
「馬鹿?おんぶした時だよ」
〝田中さん案外軽いね〟
そういえばあの初詣の夜、
三鷹くんは私にそんなことを言ってたっけ。
案外っていうのはあれだけど、軽いって…言ってくれたんだよね。
重いって思われなくて良かった…。
「それに田中さんはごく一般的に見たらブスじゃないんだと思うよ」
「……はい?」
「俺はブスって言ってるけど」
「なんの話ですか…?」
「俺の中の基準がそうなだけだから」
「……は?」
え、ほんとになんの話?
なんで突然またブスって言われたの?
しばらく言われなかったから安心してたのに…。
「田中さんちゃんと話聞いてる?」
「え、いや普通に聞いてるよ!?」
「じゃあほんと馬鹿だね」
「えぇ~…」
駄目だ。
この人の考えてることがさっぱり分からん。
改めて身にしみた。
私はもう貶されまいと、体を机に向けて次の授業の準備をし出す。
パサパサとノートや教科書を机の上に置いていく中。
「……」
じーっと隣からあからさまな視線を感じる。
恥ずかしいからそんなに見ないで下さい。
ちょっと嬉しいけどやっぱ恥ずかしいんです。
そうそわそわしつつ、私はなんとかそんな三鷹くんに構わずに準備を終えた。
と、
「…田中さん」
いつもより少し小さな声で三鷹くんは私の名前を呼んだ。