最低王子と恋の渦
――「…じゃあここ、澤村読めー」
私が現代文の驚異的な睡魔と戦っている中、菜々が当たったようで。
ボーッとしながら教科書を読む菜々の後ろ姿を見つめる。
「田中さん」
その呼び声に思わずドキッとした私は、隣の三鷹くんに振り向いた。
三鷹くんは片肘をついて私の方に顔を向けている。
……?
「な、何?」
「誕生日」
「…はい…」
「川平とデートしたんでしょ?どうだったの?」
…ど、どうって…。
これはどういう意図で聞いてるんだろう。
ただの好奇心なのか、それとも別に何か…。
「…改めて告白されました」
「…うん」
「……こ、断ったけど…」
「……」
なぜか無言な三鷹くんを見上げると、彼は少し驚いているような表情をしていた。
…え?
「……断ったんだ」
「う、うん」
「…でも頑張れって…」
…ん?頑張れ?