最低王子と恋の渦
「…そうそう、私前まで白いマフラー持ってたんだけど汚しちゃってさ…。汚れ落ちなくて捨てたんだよね…」
「実に田中さんらしいね。白にしなくて正解だった」
らしいって何!?
…そういえば三鷹くんはグレーのチェック柄のマフラーだったっけ。
うん、三鷹くんは黒のイメージがある。
…いや、白かな?
「明日から付けていこっと」
「……」
「…ん?三鷹くん?」
「何」
「え、いや…別に」
なんか黙ってたから…。
まあ別にいいや。
「あれ、もうコーヒー飲んじゃったんだ」
ふと、私のカップを見て三鷹くんがそう言った。
「うん、ごちそうさま!」
「おかわりいる?」
「あ、ううん!ありがとっ」
そう?と言って三鷹くんは自然と私の隣に座る。
これ以上飲んだらトイレ行きたくなりそうだし。
……ていうか隣座って…。
「…川平とは今まで通りなんだね」
「え?あ、うん」
一人でドキドキしていると、三鷹くんは不意にそう話を振ってきた。
友也がこれから他に好きな人が出来れば、私はそれを応援するつもりでいる。
友也がそうしてくれてるみたいに。
「…田中さんってほんとよく分かんないよね」
「えっ」
「あのさ、ずっと気になってたんだけど佐々木のどこを好きになったの?」
…はい!?
また唐突な…。
慣れたけどさ!?
「…き、きっかけは一年の文化祭の時に私のミスを庇ってくれたことかな…。そういう優しいとこに惹かれた…っていうか」
「ふーん」
「…ふ、ふーんって…」
聞いといてそれかよ…!
よく分かんないのは三鷹くんの方だと声を大にして言いたい。
…ていうかなんで佐々木くんのことなんか…。
「でも竹内さんと付き合ってるよね」
「…いや、うんまあそうらしいけども…」
なんでわざわざほじくり返すの?
もしかして私いじめられてる?
「まあもう好きじゃないけどさ」
「……は?」
「…え?」
そうはさせまいと意地を張って言ってみると、目を見開いて固まる三鷹くん。
…あれ?
「ど、どうかした?」
「好きじゃないって…、じゃあクリスマスの日のは何?」
「えっ、だからあれは気まずかっただけだって…」
「それ本気?」
「ええもちろん…」
私の返答に、ハァァと盛大な溜息をつく三鷹くん。
な、何?
私なんかした?
そう戸惑いながら俯く三鷹くんを見ていると、ゆっくり三鷹くんが顔を上げた。
「田中さんといるとほんとに調子狂うね」
「はい?」
「俺まで勘違いさせられた」
「し、知らないよそんなの…」
「田中さんの勘違い病うつったかも」
「う、うつるわけないでしょ!?」
私の言葉に、フハッとあの無邪気な笑顔を見せる三鷹くん。
…きゅうと胸が締め付けられる。
やっぱり、この無邪気な笑顔好きだな…。